■ 今北産業|忙しい人のための「3行要約」
- 自治体営業で言われる「次年度予算で検討します」は角を立てないための 事実上のお断り であり、製品の不要さや予算不足、庁内調整の手間を理由に門前払いされている状態だ。
- 9〜11月の財政課との予算折衝や春の異動期には新規営業を受け入れる余裕がないため、業務が落ち着き次年度予算を意識し始める 6月〜8月の夏場 がSaaS提案の最大のゴールデンタイムとなる。
- 合理性だけでは動かない行政組織の壁を突破するには、予算カレンダーの攻略に加え、仕様書や他自治体事例を提供して「庁内調整の苦労を共に乗り越えたい」と思わせる 担当者との信頼関係 の構築が不可欠だ。
1.このセリフを言われたら、まず諦めた方がいい
「これが入れられたらいいんですけど、今年度は厳しいので次年度予算で検討しますね」というセリフは、事実上の完全な「お断り」です。
地方自治体の職員といえど、やはり人です。
「無理です」と突っぱねて、「いや、なんでですか」「上席の方に会わせてください」なんてゴネられても面倒です(そんなことをしたら庁舎中の噂になり、職員内でブラックリスト入りしますが、やってしまう営業担当の方はけっこう多いのが実情です)。
なので、自治体職員は角を立てないように断る最強のセリフとして、特段教わるわけでもなく、上司や先輩がお断りする姿をみて自然と学んでいきます。
そして、このセリフを言われる事業者には、いくつか共通のパターンがあります。
① 必要ないと判断された
シンプルに必要ないと思われたパターンです。全体の半分以上を占めます。
② 営業にいく時期が悪すぎた
そもそも時期が悪すぎて担当者の心に刺さっておらず、めんどうだからとりあえず断られたパターンです。
③ ガチで予算がない
このパターンも大いにあります。というかほとんどの場合、予算はないものとして考えたほうがいいです。「予算が余っていて使いきらないと困る」なんて状況はもう何十年も前の話です。
④ 組織の調整が難しくて導入が厳しいと判断された
プロダクトは良いけれど、庁内調整の苦労を乗り越えるだけのメリットがないと思われたパターンです。
だいたいがこの4つのどれかに収まります。
2.重要なのは「提案時期」と「人間関係」
これを踏まえたうえで、もう一歩で惜しかったのが 「④ 組織の調整が難しくて導入が厳しいと判断された」パターンです。
このケースの多くは、提案に行く時期と、担当者との人間関係が構築できていれば通っていた可能性が高い案件です。
前述しましたが地方公務員も人です。
人と人との関係ができていれば、その苦労を乗り越えてでも導入したいと考えます。
※ただし、その担当者が稀に存在する優秀な「キーマン」だった場合に限ります。これについては別記事でお伝えします
地方自治体という特殊な組織において、「合理性」は案件を通す理屈にはなりません。
何重にも条件が重ならないと導入が難しい組織において、一つの関門である「時期」を攻略するカレンダーをここにお伝えします。
3.自治体への最適な提案時期は「夏」である
地方自治体の予算編成は、4月の新年度開始と同時に水面下で動き出します。
そして、SaaS営業が最も注視すべきは「秋の予算要求」です。
早い自治体だと9月から10月にかけて、各事業課から財政課へと「来年度、これだけの予算が欲しい」という予算要求書が提出されます。
遅い自治体でも11月には予算を締め切ります。
これを踏まえると、提案の最短ルートは明確に「夏」であると言い切れます。
■ 4月~5月:新年度開始(危険期)
▼組織のフェーズ
新年度開始。一部のデキる職員は異動早々に課題やボトルネックを見つけます。
▼職員の実情
4月からの配置換えによりてんやわんやです。新規営業にきた事業者なんて構ってられません。
▼SaaS営業はどうしたらいいか
職場や新担当への挨拶に留め、顔を売っておきます。異動した前任者のところへ行って挨拶をしておくことが「超重要」です。
■ 6月~8月:ゴールデンタイム(提案期)
▼組織のフェーズ
次年度の予算編成が頭によぎりながら職務にあたります
▼職員の実情
余裕が出てきて、一部のデキる職員は職場を改善したいという気持ちがふつふつと沸いてきます。
▼SaaS営業はどうしたらいいか
自社製品の提案を持っていくべき最大のチャンスです。担当職員が予算を通せるような「工夫(仕様書や他市町事例など)」を渡せれば完璧です。
■ 9月~11月:予算要求時期(構築期)
▼組織のフェーズ
次年度の予算要求のためにてんやわんやです。
▼職員の実情
財政課との折衝に心血を注ぎます。現場 vs 財政 のお互い「こいつらマジでわかってない」という平行線を辿り、真剣に敵対して職員同士の仲が悪くなることもあります。
▼SaaS営業はどうしたらいいか
職員との人間関係を構築し、課題をヒアリングする時期。「次年度予算には間に合わないと思いますが~」という一言で、「この人はわかっている」という安心感を与えます。
■ 12月~2月:議会対応時期(消化試合)
▼組織のフェーズ
予算を通すための議会承認の時期です。正直、実務担当者にはそんなに関係ありません。
▼職員の実情
財政課との折衝という最大の山場を終え、実務担当は消化試合です(議会に出る部長クラスはピリピリしています)。次年度のレールは敷かれ、一区切りついた状態です。
▼SaaS営業はどうしたらいいか
とにかく人間関係を構築する時期です。新提案にも向いていますが、次年度予算に入れるのは絶対に無理なので、ガツガツいくと引かれてしまいます。
■ 3月:異動の時期(デッドライン)
▼組織のフェーズ
初旬に議会が終われば、組織は「もう今年度は終わり」の異動ムードになります。
▼職員の実情
異動発表に向けてそわそわし、案件や契約のクローズに向けてバタついています。特に3月下旬は思わぬ異動発表によって精神が不安定になっている人も多い時期です。
▼SaaS営業はどうしたらいいか
挨拶程度にとどめておくのが正解です。もし既存案件があれば、完璧な報告書を提出してください。この時期に報告書が間違いだらけだったり、対応が遅い事業者は、昼休みの職員食堂での「あそこはダメ」という愚痴大会のネタになります(次の案件がとれなくなります)。
4.結局は人と人の関係
以上が、予算スケジュールからみた新規提案の最適な時期です。
ここまでで伝わっていたら嬉しいのですが、結局は人と人との信頼関係がすべてを動かすということです。
いくら公務員組織が公平であることを義務付けられていても、やはりそこで働いているのは血の通った人間です。
もちろんプロポーザルやコンペ、入札の場が公平であることは当然ですが、その手前のフェーズ(SaaS営業を職場のキーマンに繋いだり、他部署へ根回しにいったりする部分)は、担当者の気持ち次第で壁を乗り越えられることがあります。
信頼関係ができていない企業担当者のために、『成果を出しても給料が上がるわけでも、個人の実績になるわけでもない』行政職員が、手間をかけてまで動くことはありません。
逆に、「このシステムを入れれば、組織が、街が良くなる」「この人が担当であれば一緒に事業を推進できる」と思わせる信頼関係さえ築くことができれば、強固で独特な自治体の壁であっても、いくつもの条件をクリアして内側から扉を開くことができるのです。
CROSS REVIEW
[ 各業界からの講評 ]
■ 多角検証の視点
ひとつの現場で起きた課題を、異なる業界の現場目線で因数分解。明日への教訓をあぶり出します。

ohagi
– ゼネコン –
※現場トラブルへの緊急招集により、期日までに原稿が間に合いませんでした。

nekonisi
– IT –
本記事はSaaS営業のお話で、買い手の立場の記事です。
せっかくですので売り手(の内部)の立場から、買い手の人に向けて、ちょっと本音でアドバイスを書いてみます。
ぶっちゃけると、IT企業の「営業」や「ITコンサル」と呼ばれる方は、大してITの知識なんかないんですよね。
その辺のネットニュースで聞き齧ったワードをネット検索(最近だとAIに質問して)「理解した。」「勉強した。」と言っているような連中です。(個人の感想です。)
実現方法も曖昧なまま無責任に「できます。やりましょう。」なんてほざいて、具体的な内容も理解しないまま技術者にぶん投げるのがお仕事ですので、「予算の枠いっぱいまでお金をふんだくってやろう」ってことしか頭にないです。
もし本当に「適正価格で、目的にぴったりの良いシステムが欲しい」のであれば、やり方はシンプルです。
1. 目的をハッキリさせる
「何のためにこのシステムが必要なのか」を自分たちでちゃんと言語化する。
2. 現場のエンジニアを呼ぶ
営業を窓口にするだけでなく、実際に手を動かす作業者を同席させて「本当にできるのか」を直接確認する。
3. 余裕のある計画にする
無茶なスケジュールや削りすぎた予算はやめて、しっかりリソースを確保した上で依頼する。
結局のところ、発注側がちゃんと主導権を握って、実態に合った進め方をするのが一番の防衛策ってことですね。

gu
– 記者 –
行政絡みの仕事はしっかり利益を稼げるイメージが強い。
ただ、近年になって資材等コストが急騰した建設案件は業者に逆ザヤ状態として目に映り、入札不調となるケースが目立つ。
一癖ある人たちにすり寄るメリットが今後もあるのか?
これから事業費の見積額水準が全国的に見直されるかに注目が集まる

HagePo
– インフラ –
あたしゃー 予算に触れないねw
分業が進んでて本社と支社管轄イメージ


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